中之条ビエンナーレ


ひなびた温泉街で行われているイベント.今年は,市町村合併の影響で範囲が広くなったという.一日では見切れない作品群.とりあえず,二日出かけて見た.

暗闇に浮かぶ睡蓮の花と葉.幻想的と一言で言ってしまえばそれまでなのだが,目が慣れて,花,葉のひとつひとつを認識できるようになると,葉の一部に地図が裏プリントされている
「中之条の古い地図です」
地元に密着した芸術というわけだ.

町を歩いて,展示場を訪ねる.

花をかたどったようなプロペラを乗せた舟.材木置き場に展示されたモノクロームのイラストレーション.木造の人物像.オブジェ.写真を模倣したような絵画.バラック小屋に並べられた石と彫像.

あるいは,壁いっぱいに描かれた墨跡.あるいは手ぬぐい.または,ミクロに切り抜かれた森と人々の風景.そして人物画がひとをつなげていく.灯火が,それから光が.

町並みに大きく掲げられた文字群.ひとつのラブレターが町の店の看板のように連なっていく.芸術なんだよねと思わなければ,なんだか赤面していしまいそうな内容だ.

中之条街エリアを離れて,沢渡温泉へ.
ガラス障子の中央にしつらえられた池は,過去を映す鏡なんだろうか.神社の敷地に置かれた,土偶なのか地蔵なのか,アンパンマンによく似た土くれ.沢をわたる白いリボンに書かれた文字はなんだったんだろう.

地面に掘られた穴も,竹で組み立てられた城も,幼い頃に見た秘密基地.忘れ去られた古い物置も,ハト小屋も郷愁.それも芸術なのか.

過去と現在と,日常と非日常が交差する時間と空間.町をあげてのイベント.なかなか素敵だ