ますむら・ひろし原画展at八王子夢美術館

kazedayori2007-09-17


次女と三女と共に、早朝、駅に向かう。ネットで下調べしていた経路は大宮経由だったのだが、高崎から八高線を乗り継げば簡単である。
「なんで、そんな経路になったんだろうね」
「着時間を指定しちゃったからかもね」
そんな会話をしながら、次女は携帯電話で時刻表を検索している。とりあえず、高麗川で乗り継げばよいらしい。

「そういえば、こうやって野田まで行ったのは、8年前だったよね」
「え〜、もうそんなに経つのか」

ネットが繋がったばかりの8年前、漫画家のますむら・ひろしさんの作品『アタゴオル』のファンサイトで知り合った方々と会うために野田市へ出かけたことがあった。ちょうど、ますむらさんがライブをしていたイベント「月まつり」最後の年。不思議な出会いだった。

今回の原画展の前に、ますむらさんの出身地米沢市で行われた原画展には行くこと叶わなかったが。

さて、今回は最終日にようやく間に合った。次女の予定も兼ね合わせての日程。午後3時半には、家に戻らなくてはいけない。

乗り継いで、八王子駅に着く。さて、どっちだろう。このパターンも野田へ行った時と同じだ。違うのは、次女が携帯で検索してくれるという点。ナビで、方角を確認しながら歩く。北口から出て、裏道を歩いているような感じ。
「ほんとに、こっちでいいの?」
「駅から、1.3キロメートルだから、歩いて行ける距離でしょ」
「迷ったら、自動販売機の裏側へ行けばいいよね」
「それ、いいかも」

大通りに出る。さらに歩いて左折。前方に高層団地が見える。
「あんな高いところにも、誰か住んでいるんだね。洗濯物が干してある。怖いだろうね」
「洗濯物が飛んだら、探せないよね」
などと話しながら歩く。

「どこだろうね。それらしい建物は見あたらないけれど・・・」
「あ、あそこだ」
高層団地の2階にあった。市営の美術館だから、上の階は市営住宅なのだろうか?

10時開館なので、モスバーガーで時間を潰す。入り口の前の黒板に、使っている野菜の生産者の名前が書いてある。ハンバーガーではなく、ホットドッグを注文する。

時間になり、美術館へ向かう。暑いので、日陰を選んで歩く。9月だというのに、この暑さは異常だ。建物の中に入り、ほっとする。

会場にはすでに、数人のお客さんがいた。ゆっくりと回り、原画を堪能する。繊細な線のひとつひとつが、作者の情念のように迫る。ますむらさんは、アーティストなのだなと再び思う。

カラー作品は、想像していたより、明るい色彩だった。原色を想像していたのだが、淡い色使いが多い。青を基調にして、優しい風景が広がる。アタゴオルは、こんなところにあったんだ。しばし、心を遊ばせる。懐かしさをもって、時間は止まったままになる。

1時間弱の鑑賞で、帰路につく。受付で、カレンダーと手ぬぐいを購入。
「ポスターは売ってないんですか」
「ええ、売っていないんです」
「今日は最終日だから、ここのポスター剥がしてもっていっちゃったらだめですか」
受付のお姉さんが困ったように笑っていた。

帰り道は、大通りを人の流れに乗って歩く。商店に原画展のポスターが貼ってある。
「あれ、もらえないかな」
「何か買えば、もらえるかも」
電気屋さんで、何買うの?」
そんな話をしながら、歩いていると南口に着いた。あいかわらず、方向オンチな旅。

帰ってきて、あの原画の風景を思い出しながら考えていた。ますむらさんは高所恐怖症だとおっしゃっている。でも、お描きになる風景は、空を飛んでいるものが多い。想像の世界では、きっとどんなことでもできるんだ。