『SFマガジン』9月号

<「テロに屈するな」という強制>香山リカ

“そもそも、精神医学的に見ても、ひどいショックや悲しみを体験しているのに「何も起きなかったんだ」と無視して平然とすごすことは、心の回復にはむしろマイナスだということがわかっています。”
“――無理やり「全然こたえてない。私は平気だ」と元気を装うと、何年もたってからトラウマが何倍もの大きさで心を急襲する場合があるのです。”
“――このように,「テロに屈するな」という号令のもと、悲しみたい人、おびえたい人までが「そうするな」と強制されるようなムードというのは、決して手放しで賞賛されるべきものではない、と私は思うのです”

では、どうしたらいいのだろうか?
敵が来て、勇敢果敢に戦うことも、家族を守り我が身を守るために退散していくことも、それぞれの生き方として認められるべきものだということなのだろうか。

自分の価値観を他人に押し付けない。それは理想論なのだろうか。