雪雲はただ悪戯に空を翔け

三女の受験日。
いつものように起きたのだけれど、なんだか気ぜわしい。次女のお弁当を作る気もなく。8時には家を出る。学校まで、だいたい車で40分かかる。
着いた時には、雪がかなり降っていた。

9時に受付。9時半に控え室に入り、説明を受け、受験者たちはグループごとに試験へ向う。健常者と違うのは、何か起きる確率が高いので、保護者や付き添い者が待機していなくてはならない。(「待機」という単語が思い出せなくて、次女に「消防自動車が、待っている状態をなんて言うんだっけ?」と聞いたら、速攻で答えが返ってきた。もう、老化現象が始まっているのかもしれない自分)

午後2時半までかかるというので、三女と一緒に受験しているkさんがいる施設の先生とお話。その施設は昔で言う「孤児院」、でも今は親が居ても、扶養できないとか、虐待されているとかで施設で養護されていることが多いという。付き添いの先生は、わたしよりずいぶん若いが、子供たちのことをほんとうに考えていてくれるんだなと頭が下がる思いだった。kさんは、2歳のころからその施設にいるという。三女と同学年ということで、何度か接する機会も会った。三女よりしっかりしてるし、ものおじしない。自分の境遇を悲観している様子もない。施設にいるから不幸という価値観は、今はないのかもしれないな、とも思った。でも、親の愛情を充分に受けていたら、障碍者にはならなかったかもしれないという感は否めなかった。だってね、三女より普通なんだよね。かわいいんだよね。

試験が終わって、帰りの車の中で「何をしたの?」と三女に聞いてみた。なんだか、うまく説明できないようなので、誘導尋問してみる。
「最初に何をしたの?」
「んと、着替えてから、体育館に行った」
「そこで何をしたの?」
「走った。5週(あとで、それは5分間であることが、わかった)」
「それだけ?」
「それから、数学」
体育館で数学をするのか?
「数学って、計算なの?」
「国語がね、まちがえた」
もう、なにがなんだかわからない。
「体育館で、何をしたの」
「重いものもって、四角いところに置いてね。がんばったんだよ」
「そうか、がんばったんだね。それから?」
「螺子をまわしてとった。いろいろわけて、入れたの」螺子取って、分別するという試験だったらしい。
「面接は?」
「ふたつね、わかんなくて、でも、ちゃんとわかりませんって、答えられたよ」
「そうか、ちゃんと応えられたんだね」