旅路

早朝、観光客の少ない時間を狙って
桜を見にいく。
ダンナとふたりだけで歩くなんて、何年ぶりだろう。

6時9分のバスに乗り、市街地へ。
バス停から15分ほどで、公園に着く。
早朝を狙ったのは、わたしら夫婦だけではない。
カメラを抱えた人たちが、かなりいる。
「本気で、観光客のいない時間を狙うんだったら
連休をはずして咲いた年の桜を狙うしかないね」
今年の桜は、例年になくみごとだという。
天気もいいし。
(ダンナと出かけて、雨が降らないなんて奇跡だ)

青空の下の桜のトンネル。
花房を手にとって、間近に見られるのがすごい。
池の水面すれすれに枝を伸ばし
花影を落とす。

帰り際、クマゲラアカゲラの鳥影。
「ドドドドドド・・・」という音は
まるで工事中の音のようだ。
叩く木の位置と、木の種類によって
音色が違うのに驚く。天然の木琴。

9時帰宅。3時間歩きっぱなし。
お留守番してた三女がちょっと御機嫌斜め。
実家の父母も一緒に「りんご公園」へ。
新しくできた観光地。

りんご畑のどまんなかに「すり鉢山」
頂上から、りんご畑全体と津軽平野が展望できる。
高を括ってたが、花が咲いたらきれいだろうなあ。
これって、郷愁なのか?

園内にできた旧農家を復元した建物へ。
中で「津軽弁昔語り」の催しもの。
『久度寺の白狐』『岳温泉のできたわけ』
昔話には、仏教の教えやら、歴史やらが織り込まれている。
津軽地方を襲った大飢饉。
人間が人間を喰った年。北国にはそういう歴史がある。
こけしは「子消し」の言い換え。
生まれて産声をあげないものは「ひとではない」
産声をあげる前に、濡れ雑巾を顔に押し当てた。
一姫二太郎」は、津軽藩がとった人口を増やさないための政策。
そんな話を津軽弁でする昔語り。

ダンナと三女には、ほとんど理解できなかったようだ。

園内のレストランで食事。
「りんごコロッケ」「りんごの炊き込みご飯」
単に、りんごが入っているだけなんだが
特に違和感はない。健康食と考えればいいんだろう。

少しずつ、あるいはガラリと
変わっていく故郷。
思い出の中にあるものだけが古里。